近々関野さんの商材、関野式エリオット波動塾が再募集されるようですが、これにあたって、エリオット波動が、本当に優位性のある手法なのか?について、考えてみたいと思います。
関野式エリオット波動塾については、以下でレビュー済みです。
>>関野式エリオット波動塾のレビュー
目次
理論の根拠の重要性について
私は、FXで生計を立てる前は、「研究所で働いていた」ということは、これまでに何度か書いてきたと思います。ここでは、毎日様々な研究結果が発表されていました。私も2~3ヶ月に1回くらいの頻度で、日々の研究結果を発表していました。
そして、ここで一番多く聞けるキーワードが1つありました。それは「その根拠は?」というつっこみです。もう上司の発言=その根拠は?と言えるのではないかと思えるほど、この言葉は頻繁に飛び交っていました。
「根拠」を辞書で引くと、「判断・推論などを成り立たせるよりどころ。行動などの正当性を支える事実」とあります。つまり「その根拠は?」というつっこみは、「私の判断の正当性を支える事実があるのか?」と聞かれているわけです。根拠がないと、「判断の正当性を支える事実」がないわけなので、私の判断が正しい証拠がないということになります。なので上司が根拠にこだわっていたのは十分に納得できます。
では、この根拠の意味をしっかり頭においた上で、エリオット波動の説明を見てみてください。
>>エリオット波動 – Wikipedia
この説明の中に、根拠の提示があるでしょうか?上記で書いてあるのは、「上昇する時はゆっくりと上昇し、下落する時は一気に下落する」みたいな内容のみであり、そう言えることの根拠は一切解説されていません。
では逆に、根拠の伴った主張というのは、どういうものなのか?以降で私は「FXは下落が速い事実はない」という主張を行っています。そしてそう判断できることの根拠として、日足のデータをまとめた結果を出しています。このデータが「FXは下落が速い事実はない」ということの根拠となるわけです。
エリオット波動のように、根拠がない主張というのは、その主張が正しいことの証拠が一切ないわけなので、その主張が正しいか?はわからないということになります。この場合、その理論を実践して勝てるか?は、わからないわけです。
そもそも、もしFXが理論で勝てるのであれば、「FXは、勉強すれば勝てる」ということになると思います。でも、よく言われるのが、「FXでは、9割の人が負けている」ということ。理論を勉強すれば勝てるのであれば、こういう事態にはなっていないはずです。エリオット波動ほど有名な理論なら、みんな勉強していると思うので、これで勝てるのであれば、もっと勝てる人がいるはずです。王道の理論を学んだ、ほとんどの人が勝てないということは、その理論自体に優位性はないのかもしれません。
私は、高校、大学と物理を学んできましたが、物理の理論は、もっと根拠のしっかりしたものばかりでした。物理の理論に比べると、相場の理論は、根拠の解説がほとんどない、極めて完成度の低い理論のように思います。なので、これで勝てないのも納得ができるわけです。
では、このような根拠のない理論しかない物事で、本当に勝てる、正しい手法を見つけ出すには、どうすればいいでしょうか?もうこれは、根拠がないのであれば、自分で考えるしかありません。私は長期間安定して勝てていますが、手法の確立にあたっては、既存の理論を一方的に採用するのではなく、きちんとした根拠があるのか?を考えて、手法の取捨選択を行い、自分のトレード手法を確立しています。
以降では、エリオット波動の根拠について、自分なりに考えてみたので、参考にしてみてください。
エリオット波動とは?
まず、そもそもエリオット波動とは何なのか?ですが、これは以下、ウィキペディアで詳しく解説されています。
この理論によると、1つの相場には「上昇5波動」と「下降3波動」が存在する。
上昇局面では、以下のような「5つの波動」を描く。
上昇第1波→上昇第2波(調整)→上昇第3波→上昇第4波(調整)→上昇第5波下降局面では、以下のような「3つの波動」を描く。
下降第1波→下降第2波(調整)→下降第3波つまり、上昇時にはジワジワと「底上げ」しながら上げていく事が多く、下降時には一気に下落して、一度は反発する…という事である。これらの波動については、「上昇5波動のうち第3波動が最短になることは無い」という理論がある。従って、第3波動が最も短くなる波動の捉え方は、そもそも波動の捉え方自体に誤りがあると解釈されることとなる。また、上昇第5波の最高値は通常上昇第3波よりも高くなるが、時折第5波の最高値が第3波の最高値を超えられずに下回る場合がある。これをフェイラーと呼び、相場の転換点となる可能性が高い波形であるとされている。この他に、トレンドの勢いが強い場合は上昇5波または下降3波を超えて波動が描かれることがあり、これをエクステンションと呼ぶ。
簡単に言うと、価格の値動きの波形の型、つまりパターンのようなものです。
各理論を細かく考察してみる
まず、冒頭でも書きましたが、この理論を教えられて、「なるほど、こういう値動きのパターンがあるのか」と、一概に考えないことです。なぜなら、そう考える根拠が、一切書かれていないからです。
「こういう市場参加者の心理が働くから、こういう波形を描く」こういう解説なら、きちんと根拠の伴った理論と言えますが、エリオット波動の解説は、このような根拠の解説はなく、「こういう波形を描く」の部分のみの解説となっています。なので、これだけの情報を元に、「それが正しい」と認識するのは危険です。
ネット上の情報には、根拠の解説はないので、以下、自分なりに根拠の部分を考えてみたいと思います。
上昇5波動と下降3波動
1つの相場には「上昇5波動」と「下降3波動」が存在する。つまり、上昇時にはジワジワと「底上げ」しながら上げていく事が多く、下降時には一気に下落して、一度は反発する…という事である。
これに関しては、その根拠の部分は、いくら考えても、見い出せませんでした。なぜ、そのようなことが言えるのか?まったくわかりません。
上昇の動意が弱ければ、第3波、第5波で、前回高値を更新できないことも考えられますし、また、上昇の動意が強ければ、第7波、第8波と、トレンドが継続することもあります。そして、実際にそのようなチャートパターンも、たくさん存在しています。
なぜ、5波と、決めつけてしまうのか?その根拠が、考えつきません。
また、その後の「上昇時にはジワジワと底上げしながら上げていく事が多く、下降時には一気に下落して、一度は反発する」という部分については、こう言えることの根拠としてよく言われているのが、信用の観点で、買いよりも売りが速いという性質があるからです。
これは株に限って言えることなのですが、例えば、企業が何か不祥事を起こした場合の売りというのは、一気に投げ売られます。「上げ百日、下げ三日」「買いは建築 売りは崩壊」なども、似たような意味として、よく使われます。
何事においてもそうですが、人から信用を得るのはとても時間がかかりますが、不祥事を起こして信用を失うのは一瞬だということです。なので株価に関しては、下落が早いという根拠について、納得できます。
ただ、だからと言って、これがFXにも当てはまるか?というと、そういうわけではありません。なぜなら、FXは、上昇=買い、下降=売り、とは限らないからです。例えば、ドル円が下落していたとします。この場合、もちろんドルが売られドル円は下落しますが、円が買われてもドル円は下落するわけです。
株のように、上昇=買い、下落=売り、が大前提なのであれば、信用という観点で売りが速い、つまり下落が速いという値動きになりますが、FXは「下落=売り」ではないので、株と同じように、信用の観点で下降が速いと考えることはできません。
では、信用の観点以外で、他に、FXにおいて下落が速いという理由が、何か考えられないか?ネットで検索してみたところ、以下のようなに、重力を理由とする情報を見つけました。
引用:なぜ、下げ相場のほうがスピードが速いのか?|ザイFX!
上昇するには重力に逆らうので遅く、一方下降の場合は、重力に従うので早い、とする考え方です。では、本当に、このようなことが言えるのか?というと、もう、これはデータを見てみれば一目瞭然です。
仮に、上昇より下降の方が早い、と言えるのであれば、価格が同じ期間においては、陽線よりも陰線の方が少ない、ということになります。エリオット波動の説明に書かれている通り、「上げ百日、下げ三日」になっているのか?を、実際のチャートで確認するということです。
下のチャートは、ドル円の週足になりますが、2016年9月16日現在のレートは、2013年5月13日付近のレートと同じであるため、この区間の、日足の陽線と陰線の数を調べてみます。
ヒストリカルデータは、マネースクウェアジャパンさんからお借りしました。
>>http://www.m2j.co.jp/market/historical.php
エクセルで、終値-始値を計算し、正の数であれば陽線、負の数であれば陰線ということになり、これで「0より大きい」「0より小さい」でフィルタをかけて、データの数を調べてみた結果、陽線418、陰線446という結果でした。
データソース:https://review.jp/wp-content/uploads/USDJPY.xlsx
結果は、ほぼ同等であり、むしろ数としては陰線の方が多くなっています。よって、この結果から、下降の方が早い、という事実はない、と言えるわけです。
一応その他通貨ペアでも確認してみます。
下のチャートは、ユーロドルの週足になりますが、2016年9月16日現在のレートは、2015年1月25日付近のレートと同じであるため、この区間の、日足の陽線と陰線の数を調べてみます。
データの数を調べてみた結果、陽線215、陰線212という結果でした。
下のチャートは、ユーロ円の月足になりますが、2016年9月16日現在のレートは、2013年3月1日付近のレートと同じであるため、この区間の、日足の陽線と陰線の数を調べてみます。
データの数を調べてみた結果、陽線479、陰線475という結果でした。
下のチャートは、豪ドル/米ドルの月足になりますが、2016年9月16日現在のレートは、2009年5月1日付近のレートと同じであるため、この区間の、日足の陽線と陰線の数を調べてみます。
データの数を調べてみた結果、陽線1004、陰線904という結果でした。
豪ドル/米ドルに限っては、若干陰線の方が少なくなっていますが、1割前後なので、ほぼ同等と見ていいと思いますし、その他通貨ペアでは、陽線が多かったり、限りなく同じ数になっており、これも込みで判断すると、陰線が少ないとは言えないでしょう。
つまり、「下降が早い」という理論については、FXにおいては「そういう事実はない」と言えます。
理屈的に考えても、確かに物体は、重力の影響を受けるので、上昇よりも下落の方が速いです。しかし、だからといって、根本的に動き方の構造がまったく異なる通貨の値動きも、物体と同じように考えること自体、無理があると思います。
ちなみに、海外版Googleで「eur chart」で検索すると、1位にはxe.comのUSD/EURチャートが出てきます。これは1ドルが何ユーロか?を示したチャートで、EUR/USDとは真逆の値動きとなっています。
つまり、私達がいくらEUR/USDチャートを見て落ちた=怖いと思っても、USD/EURを見ているアメリカ人のチャートでは上昇しているわけなので、怖いという心理は働いていません。全世界の人が共通してEUR/USDチャートを見ているわけではないので、このことからも下落が速いという事実は一切ないと言えるでしょう。
まとめると、下落が速いという傾向については、株については、論理的に考えると、信用の観点から、そのような傾向があることの説明がつくが、FXにおいては、下落が速いという事実はない、ということになります。
Wikipediaのエリオット波動についての解説は、相場全般について書かれており、FXに限ったものとして書かれているわけではないので、「下落が速い」と書かれていても、間違いではないと思います。しかし、ザイFX!の方は、FXについて「下落が速い」と書かれているので、これは間違いであると私は考えています。
ちなみにですが、FXにおいて下落が速いという事実はないと書きましたが、株同様に、売りが速いという事実はあると思います。なぜなら、通貨の信用も、信用を築き上げるのには時間がかかりますが、信用を失うのは一瞬なので、売られる方が速い可能性があるからです。例えば、その国の経済情勢が不安定になったりすると、その国の通貨も危険視され、よく暴落していると思います。
FXにおいて、仮にドル円が下落した場合、ドル売りによる下落か?それとも円買いによる下落か?を判断する方法ですが、これは複数通貨ペアを見る、ということをやれば判断できます。
ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルの3つのドルストレートと、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円の3つのクロス円を見ます。
仮にドルストレート全てが下落していればドル売りによるドル円の下落であり、クロス円全てが下落していれば円買いによるドル円の下落と判断します。
つまり、複数の通貨を見ることで、ドル円の下落が、ドル起因なのか?円起因なのか?がわかる、ということです。ドル起因なら全てのドルストレートが下落するはずであり、円起因なら全てのクロス円が下落するはずだからです。
なので、この方法によって、売りか?買いか?が判断できるため、「売りが速い」という特徴は、FXにも生かそうと思えば生かせます。もし売りが速いという事実があるのであれば、例えばドル円が下落していた場合、ドル売りによる下落なのか?それとも円買いによる下落なのか?を調べ、ドル売りによる下落なのであれば、スピードが速いので、よりチャンスである、という手法も考え付きます。
ただ、これは最初にやったように、ヒストリカルデータをまとめてデータ整理をする、みたいにして、優位性を判断することは不可能です。FXの場合は、一概に、上昇=買い、下降=売り、とは限らないからです。なので、データ結果をもって、売りが速いことを証明することは不可能です。
上昇5波動のうち第3波動が最短になることは無い
「上昇5波動のうち第3波動が最短になることは無い」というのは、結局何が言いたいのか?というと、第3波が一番大きくなりやすい、ということを言いたいのだと思います。
例えば、これまで下降トレンドで下落している相場があったとします。その後、上昇の第1波が出た時点では、まだ下降トレンド中の状態にあります。よって、ここで大きな買いが入ってくることは、あまりありません。
一方、その後、第2波で押しを作った後の第3波の場合、前回高値を上抜けた時点で上昇トレンドが確定します。よって、積極的な買いが入ってきやすいことから、第3波が一番伸びやすい、ということを言っているのだと思います。
この内容については、高値安値の概念が関連してくるわけですが、下降トレンド局面において上昇トレンドを作ったということは、それまでの売りが損切り注文を出すわけなので、損切り注文を巻き込んで、大きな上昇になる、ということも納得できそうです。
このあたりの内容は、GT5さんが一番詳しいような気がします。彼らが言う、「3の3」というやつです。
参考:エリオット・応用編(長期3波と短期3波)
私もこの考え方は納得できるので、取り入れている部分もあり、エリオット波動理論の中では、唯一腑に落ちる内容でもあります。
フェイラー及びエクステンション
フェイラーとは、上昇5波目が3波目を超えられなければ、相場の転換点となる可能性が高い波形。
エクステンションは、トレンドの勢いが強ければ、上昇5波目を超えて、7波目、8波目と波動が描かれる、ということ。
言われていることは、もちろん正しいとは思いますが、もう、これを言ってしまうと何でもアリというか、だったらエリオット波動の「上昇局面では5つの波動を描く」という理論が何だったのか?ということになってしまうと思います。
「上昇局面では5つの波動を描く」のであれば、5波目が出たら逆張りで売りを行えばいいわけですが、しかしトレンドの勢いが強ければ、エクステンションの7波目、8波目があるわけですよね?
「上昇局面では5つの波動を描く」のであれば、4波目で落ちてきたところで再上昇の5波目を狙って押し目買いを行えばいいわけですが、しかしトレンドの勢いが弱ければフェイラーとなり、トレンド転換してしまうわけですよね?
結局、エリオット波動を、どうトレードに生かせばいいのか?がわかりません。こんなに例外を付け加えられると、そりゃーどれかには当てはまると思います。
例えるなら、「私は、明日の天気を正確に予想することができます。明日は晴れです。しかし今後風が強まれば曇りになります。今後風向きが変われば雨になります。」と言っているようなものです。こんなに例外を付け加えられると、そりゃーどれかには当てはまるだろ^^;と思わないでしょうか?
自分で手法の選別をすることが、いかに重要か?
今回は、エリオット波動の優位性について書いてみましたが、基本的に私は、今回やったように、その他いろいろな手法についても、
・きちんとした理屈の通っている手法なのか?根拠はあるのか?
・検証やデータまとめをして、優位性のある結果が得られた手法なのか?
を考えて、採用するか?しないか?を判断しています。
「上昇5波動と下降3波動」と「上昇5波動のうち第3波動が最短になることは無い」については、明確な答えが出せないので、上記私が書いた内容も、絶対に正しいとは言えないわけですが、「下落の方が早い」という理論については、データまとめの結果から、そういう傾向にないことが明確に証明できるわけです。
「下落の方が早い」という理論は、ザイFX!で解説されていましたが、ザイFX!というと、FX系情報発信サイトの大手であり、情報発信元としては、信頼性は高いと考えられますが、そのサイトですら、「下落が早い」という事実無根の情報を出しているわけです。
大手でこれなので、その他小規模サイトや商材であれば、さらに誤った情報を発信している可能性は高まるでしょう。なので、全ての情報が正しいと思わず、私がやっているように、その情報が正しいのか?を、自分で考えて、情報の取捨選択をする必要があります。
あと、情報の正当性を判断するには、それを言う人の実績も重要です。結局、FXにおいて何が正解か?というと、トレードして利益を出すことだと思います。それなら、勝っている人の言うことは、正しいわけです。
私は、「最初に口座を1つに決めて、その口座のトータル損益を毎月報告する」という不正ができないやり方で、信頼度の高い実績を公開しています。
>>管理人のFX月間成績報告
現状、商材販売者や、各種サイト等で、様々なトレード手法が公開されていますが、私のように信頼度の高い実績を出している人は他にいません。実績がない場合、そのトレード法で本当に勝てるのか?の証拠がないわけなので、その手法を実践しても勝てるようにはならないでしょう。
私は、実績を公開した上で、手法の解説を行っていますので、他の情報源よりも、勝てる情報である可能性は、はるかに高いと思います。他の記事でも、勝つためのヒントをたくさん書いていますので、是非参考にしてみてください。
正しい考え方、手法を習得したければ、
・きちんとした根拠のある理論なのか?
・それを言っている人の実績はあるのか?
この2つを考えて、手法の取捨選択を行うようにしてください。
上昇5波下降3波は、よくある間違いです。
実は、私も最初はそう思っていましたが、エリオットの研究機関から正確な情報をいただきました。
3波は調整波なので、上昇波動にも下降波動にもついてきます。
5波で推進して、3波で修正しながら上昇の時も下降の時も進んでいきます。
トレンド転換の時だけ、転換前の調整波はありません。
それから、3波が常に一番大きくなるとは限りません。
大きくなることが多いだけで、推進波3波の中で一番小さくなることがないということです。
これも、多くの方が勘違いしていることです。
私も自営業との兼業トレーダーなのですが、頑張ってください。